ピアノを習っているほとんどの人が使用する教本「ブルグミュラー」。
その中でもアラベスクは特に人気曲であり、アップテンポで躍動感を感じる魅力的な曲です。
発表会など、人前での演奏にもよく取り上げられる曲です。アラベスクの意味や曲の背景を理解し、弾く時のポイントをしっかり押さえていきましょう。
アラベスクの意味とは?
アラベスクの語源は「アラビア風の」という意味です。アラビアは、中東にある世界で最も広大な半島であり、インド洋、地中海、ペルシア湾、紅海に囲まれています。
アラビア半島の中央部は熱帯乾燥地帯で、全国土のおよそ3分の1が砂漠地帯となっています。
また、半島東部は油田地帯となっており、石油産出地域として有名です。
引用:コトバンク
アラベスクは一般的に、イスラム美術で発達した「唐草模様」のことを指します。
花や葉などの植物や星などを複雑に組み合わせた幾何学的なデザインで、モスクの壁画などに見られます。
イスラム教では、偶像崇拝が禁じられており、彫刻や絵画、自然物などを崇拝することを厳しく否定していました。そのため、人物などの描写はなく、複雑で抽象的な装飾模様から構成されています。
音楽の場合、アラビア模様を音で表しています。
アラベスクの華やかさや幻想的な世界観を急速なテンポで表現する、また、アラベスクは同じ模様を繰り返していることから、反復するという意味も含まれています。
曲全体として、細やかで絶え間なく動く様子を表現しています。
ブルグミュラーのアラベスク:曲の概要
作曲者:ヨハン・フリードリヒ・フランツ・ブルグミュラー(Johann Friedrich Franz Burgmüller)、ドイツ人(1806年)
調:イ短調(A-moll)
速度:Allegro scherzando
拍子:2/4拍子
音楽用語:leggiero、risolute、dolce、dim. e poco rall.、a tempo
- leggiero:軽く、優美に。
- risolute:決然と。
- dolce:柔和に、柔らかく。
- dim. e poco rall.:だんだん遅く、弱く
- a tempo:元の速さで。
引用:音楽用語辞典
アラベスクの難易度は?:初級(後半)~中級(初め)
アラベスクは、一般的に小学校4年生から6年生でよく課題曲として使用されます。
子供がピアノを習い始める年齢としては5~6歳が多いため、初級後半から中級の初めくらいの難易度であると考えられます。
もちろん個人差があり、表現力やスキルをどこまで追求するかによっても変わってきます。
曲の表現力、スキルを磨くことがその後の上達に大きく影響します。ただ楽譜通りに弾くのではなく、上述したアラベスクの意味や背景を意識して練習に取り組むようにしましょう。
アラベスクの弾き方ポイント
アラベスクの意味、背景を理解したら、実際に楽譜を見て練習していきましょう。
ここでは、アラベスクを上手に弾くためのポイントを解説します。
ポイントは以下の7つになります。
- 一定のリズムを刻む
- 和音を崩さない
- 16分音符を乱さずに弾く
- 跳躍している音を確実に弾く
- アクセント、スタッカート、レガートで
メリハリをつける - 音の強弱をコントロール
- メロディーを主役に
1. 一定のリズムを刻む:2拍子を意識する
アラベスクは、急速なテンポで表現する曲として作られています。楽譜の最初に”Allegro scherzando“と楽語が記載されており、これは「早く(Allegro)」「滑稽に(scherzando)」という意味になります。
早い曲は、弾いているうちにだんだんテンポが上がりやすいため、一定のリズムを維持すること意識しましょう。
一定のリズムを維持できるようになるためには、メトロノームを使った練習が有効です。初めはゆっくりとしたテンポで、間違えずに弾けるように練習します。
そして、少しずつメトロノームの速度を上げましょう。
具体的には、まずアラベスクの元の速さ「四分音符♩=112~144」の半分の速さ(四分音符♩=56~72)でメトロノームを設定して練習します。
そして、ミスがなくなってきたら徐々にメトロノームの速さを上げ、最終的に本来の速さで弾く、という練習方法になります。
メトロノームを使った練習を習慣にすることで、一定のリズムで弾くことができるようになります。
また、アラベスクは2拍子の曲であるため、基本的には1拍子目の音が強、2拍子目の音が弱、という強弱の付け方になります。
メロディーやアーティキュレーションによってはこれに当てはまらないこともありますが、基本的な2拍子の強弱を頭に入れておくことで、リズムを刻みやすくなります。
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2. 和音を崩さない:音の塊を意識する
アラベスクでは三和音が出てきます。3つの異なる音を同時に鳴らすことで三和音となり、これを崩さずに鳴らすことが大切です。和音を綺麗に鳴らすコツは、以下の2つになります。
- 鍵盤に対して指を寝かせない
- 手の形を固める
指を寝かせた状態で和音を弾くと、指に力が入らず音がばらけやすくなります。
また、和音によって素早く手の形を変えることで、まとまった音を出せるようになります。
和音の組み合わせによって、手の形を確認することが大切です。
この2つのポイントを押さえて、どの和音でも均一に音が出せるよう練習しましょう。
3. 16分音符を乱さずに弾く
アラベスクのメロディー部分となる16分音符は、指が滑ってしまったり、浮いてしまったり、均一な音を出すことに苦労するところだと思います。
また、右手だけではなく、左手にも16分音符が続くところがあるため、この部分はよく苦戦するところです。
16分音符の有効な練習法としては、リズム練習です。テンポを変えたり、特定の音に力点を置くなど、様々なリズム練習をしてみましょう。
具体的には、「ラシドシラ」を「ラシードシーラ」「ラーシドーシラ」のように、リズムを変えて練習します。
音と音の間の長さを変えて練習することで、指をスムーズに動かすことができるようになります。
様々なリズム練習をして、16分音符を乱さず弾けるようになりましょう。
リズム練習については、以下の記事で詳しく解説しています。
4. 跳躍している音を確実に弾く
音の跳躍は、跳躍する距離が長いほど難しくなります。
音をはずしてしまったり、遅れてしまうと目立ちやすいため、跳躍練習は念入りに行う必要があります。
特に、アラベスクの最後に出てくる音の跳躍は、曲の中で最も印象を残します。
アラベスクの華やかさ、幻想的な世界を締めくくる大事な部分となるため、確実に音を出せるように練習しましょう。
跳躍を成功させるためのコツとしては、以下の2つになります。
- 手を移動させる前に、視線を跳躍先に移す
- 手の形を定める
跳躍に失敗する原因として、手元を見ていることが挙げられます。
手元に視点を置いてしまうと、視野が狭くなり、跳躍に間に合わなくなります。
跳躍は、最短距離で確実に行う必要があるため、まず目で跳躍先を確認し、その視点に合わせて素早く手を移動させることを意識しましょう。
また、跳躍する間にある程度手の形を定めることで、間を空けずにスムーズに音を出せるようになります。
この2つのポイントを押さえて、跳躍を確実に成功できるように練習しましょう。
5. アクセント、スタッカート、レガートでメリハリをつける
アクセント、スタッカート、レガートといったアーティキュレーションは、曲の表現力に重要です。
これらのアーティキュレーションをつけるためには、鍵盤に対する指の角度を変えるだけでなく、手のタッチが重要になります。
アクセント、スタッカート、レガートそれぞれを適切に表現できるよう指や手の動きを確認しましょう。
6. 音の強弱をコントロール
フォルテ(f)、ピアノ(p)といった音の強弱は、アーティキュレーションと同様、曲の表現力に大変重要です。強弱の差をつけるほど曲の表情を変えることができ、曲全体にまとまりができます。
楽譜の強弱記号を確認し、的確に音量調節できるよう練習しましょう。
7. メロディーを主役に:伴奏とのバランスを意識
譜読みを始めた最初の頃は、楽譜を読むことに精一杯で、メロディーを意識することが難しいと感じるのではないでしょうか。
しかし、すべての音を強く出してしまうと、単調な曲となってしまいます。
メロディーの音を出し、伴奏の音をいかに抑えるかで、曲のクオリティーが大きく変わります。
まずは、楽譜の初めから終わりまで、どこがメロディーかをチェックします。
新しい曲を弾く時には、必ずメロディーを把握してから練習するようにしましょう。
メロディーをチェックしたら、続いて片手練習をします。
アラベスクでは、右手が常にメロディーではなく、中間部分で左手がメロディーになります。
そのため、片手練習の中でメロディー部分と伴奏部分の強弱をつけることができるよう練習しましょう。
片手練習で、メロディーと伴奏を弾き分けることができるようになったら、両手で弾いてみましょう。
両手の練習では、左右の音量バランスを調整し、しっかりとメロディーが発音できているかどうかを確認しましょう。
まとめ
ブルグミュラー「アラベスク」の練習法をまとめると以下のようになります。
- 一定のリズムを刻む
- 和音を崩さない
- 16分音符を乱さずに弾く
- 跳躍している音を確実に弾く
- アクセント、スタッカート、レガートで
- メリハリをつける
- 音の強弱をコントロール
- メロディーを主役に
これら7つのポイントを押さえて、アラベスクの華やかさや幻想的な世界観を表現できるようになりましょう。
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